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2020.07.11 | Bespoke

衿裏のヒゲ サローネパルテンツァ 大阪

衿裏のヒゲ サローネパルテンツァ 大阪のアイキャッチ画像

今日は少し仕立てのことについて少々書きたいと思います。
ややマニアックな?内容かもしれませんがどうぞお付き合いくださいませ。
 
スーツやジャケットの上衿を裏返した際に見られるこのディテール。
「ヒゲ」
何の為にこの部分に生地が折り返してあるかご存じでしょうか?
(このジャケットは先日ご紹介した8割工場縫製、2割手縫いで仕立てたものです)

 

よく見かける文言として、「ヒゲがあるスーツはいいスーツだ。」
という言葉をよくよく見かけますが、そもそも何の為に付いているのかはあまり書かれていません。
 
このヒゲには2つの目的があります。
 
1つ目は首周りや肩周りのサイズを修正することが発生した際や体型補正が発生した際に、
上衿の生地のこの部分に余分を残しておけば残布が無くとも、上衿の芯のみ新たに作り替えて
生地をそのまま流用することが出来ます。
どういうことかと言いますと首の後ろ中心(O点)~衿ミツ前衿グリ(M点・N点を経ての下衿までの
距離)の修理や修正で距離が変わった際に対応出来るよう生地を残しておくということです。
 
その昔、スーツやジャケットは親から子へと受け継いで着ていたと言います。
今よりも生地自体が貴重であったり、工場縫製の既製品などが無かった時代、
洋服というものは一張羅という言葉があるように大事に大事に着用されていました。
そして受け継ぐ際にサイズ直しが発生しても対応出来るようにと考えだされたのが
ヒゲです。

もちろん上衿だけでなく、肩や脇、背中心にいたるまで表からは見えない縫い代は
既製品よりもはるかに多くの分量を残して仕立てます。
 
こちらは肩入れ前の前身頃N点付近を撮影したものです。
波縫いしてある白毛の右側が前身頃の肩部分の縫い代です。
工場だと0.7~1.0cmくらい残すのが普通ですが私の場合は2.0~2.5cm程度
残すようにしています。

前身肩線の縫い代を多く残すのには上衿のヒゲに連動性を持たせる為と
後身頃の肩線を縫い合わせた際にイセが入り前身肩線が伸びてしまうのを
極力防ぐ意味もあります。(アイロンの当て方も非常に重要ですが)
これに連動して袖の後ろ側にも縫い代を多めに付けます。

 

ヒゲだけ付ければいいという訳ではなく、全ての箇所が連動して修正出来るように
してなければ意味を成しません。
先人の知恵や技術は本当に凄いと感心するばかりです。
 
2つ目の目的は上衿の端が跳ね上がりにくくするという目的です。
これは衿芯とカラ―クロスを止め付けるハ刺しも非常に重要ですが、
上衿の生地をかぶせる際にも気を遣い身頃に衿が吸いつくように
仕立る為です。
 
仕立の世界はディテール1つとっても非常に奥が深いです。
理屈や知識だけでは格好良い服を作ることは出来ませんが、
知っているのと知らないのでは出来上がりにも差が出てくるのではないかと思います。
正直仕立に関しては私自身もまだまだ勉強中でして、生涯学び続けなければいけないと
考えています。
考える事をやめたり現状維持では進化は望めませんからね。
 
カメラが写りこまないように首を傾けているので変な姿勢になっていますが
最後に上衿、下衿の写真をアップで。

 

本日もご覧頂き誠にありがとうございました。
また別のディテールについても書いてみようと思います。

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