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August 17, 2021

「織り」工場の見学

オーダースーツを取り扱う御幸毛織の直営店としては当店の姉妹店というか先輩である【サローネ・パルテンツァ】東京・札幌・大阪の3店舗があります。名古屋とはスタイルが異なりそれぞれ立派な路面店を構えていますがクラフツスーツをお客様にお届けする、という理念は共通しています。

夏季休業前の週に、各店長が名古屋に集結しました。直営店として洋服の知識(製造工程やメンテナンス)を深める目的で、研修や工場見学を行ったのですが、私も便乗させていただきました。

今回はそのカリキュラムのなかで「服地を織る」工程の見学について紹介させていただきます。

原料(ウール)から製品であるスーツが出来上がるまでに、かなり大雑把に分類すると

  • 産毛
  • 製糸(紡績)
  • 製織(機織り)
  • 仕上げ(染色・整理)
  • 縫製

という段階になると思いますが、今回は③に該当する部分になります。

「織り」については愛知県一宮市の数軒の協力工場様にお願いしておりますので名古屋から社用車で一宮市に向かいました。

服地を織るためには先ずタテ糸を準備します。この工程を「整経」と呼びますが、通常の服地はだいたい4~5千本のタテ糸で構成されています。多いものでは1万本近くにもなりますが、それらを何度かに分けて整えて「ビーム」と呼ばれる大きなロール状の器具に巻き替え準備してから織り機に1本1本通して行きます。1本も間違えることができないため、厳しい眼でチェックしなければならず、想像するだけで気の遠くなるような作業です。

織り機にも種類があり、昔ながらの旧式織機(ションヘル織機と呼ばれることも多いです)と革新織機に分かれます。

まずはションヘル織機。

「シャットル」という杼(ひ)が1分間に80回ほど左右に行き交ってヨコ糸を運び、糸ます。行ったり来たりを繰り返すのは同じ語源のバドミントンのシャトル(羽根)やスペースシャトルと同じです。後述する革新織機に比べるとゆっくりした動きになり生産効率は良くありません。1反を織り上げるのに二日ほどかかります。しかしタテ糸に掛かるテンションも低めに設定できるので「ふくらみ感のある」服地を織ることができると言われています。主に生産ロットの少ない高級品はこのタイプの織機で織られることが多いです。

服地の「耳」にはネームと呼ばれる文字が織り込まれていることが多いですが、織り機にはこのような機械が併設されていてパンチング穴のあるカードを使って文字が設定されています。

続きまして革新織機です。こちらの協力工場様で使われているのは、杼のない「レピア式」、そして原理的には旧式と同様ながら大きく進化させた「スルザー」タイプです。スピードは150~300ほどで旧式織機の2倍から4倍ほどです。本当はもっと高速で運転できるのですが、品質重視のためにあえて回転数を落として服地のストレスを軽減させています。半日で1反が織り上がる計算になりますが、こちらはロットの大きなフォーマル地などを扱うことが多いです。

織りの工程は本当に手間のかかる大変な作業を伴います。整経でしっかり準備したあと、織機が動き始めてからも気を緩めることはできません。糸切れなどトラブルがもし起きてもすぐ対処できるように常に眼を光らせています。

旧式織機、革新織機ともに熟練した職人さんが情熱と愛情をもって機械と向き合ってくれているからこそ、よい服地が織り上げられるのです。