MIYUKI Journal

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Vol.3「MIYUKI CRAFTS SUITS」について(中編)      – ハウスカットのこと –

MIYUKI CRAFTS SUITS について深掘りしたお話をシリーズでお送りしています。

前編では、MIYUKI CRAFTS SUITS(以下MCS)について、どんな想い・コンセプトを込めたお店なのか、どんな特徴があるのか?など 執行役員 開発部部長 兼モデリストグループ グループ長 の金子さん、MCS ディレクターの富山さん、そして広報グループ小森さんの3人で対談しました。

小森:MCS でしか手に入らないもの、オリジナルの商品はありますか?

富山:はい、テキスタイルメーカーですので、御幸毛織の生地、というのはもちろんの事ですが、一番大きな部分としましては、服のパターンで、MCS のオリジナルのものがございます。「ハウスカット」という名前なのですが、ハウス=(MCS)のカット=(モデル・洋服)という考えで、当店(MCS)でしか手に入らない洋服になります。

小森:ハウスカットは他のスーツとは、一体何が違うんですか?

富山:僕も今日ハウスカットを着ているのですが、見ていただいて何が違うのか、というと分からないですよね?

小森:そうですね…。

富山:スーツというのは、表層的なデザインだけではなく、一番重要なのは、その服を着てその人が得た着心地で、どういう感動が得られるか?という部分が一番大事だと思っています。御幸毛織は「愛せる服を」を目指していますので。

コンセプトから服の構築に至るまでの考え方が、他のものとは全く違うのですよ。

細かくお話しすると、3 日間位はかかってしまいますので…(笑)かいつまんで、お話ししますね。

小森:はい、お願いします(笑)。

富山:まずは、圧倒的に着心地の良さですね。軽さ、柔らかさ、日本の気候にあった服作り、日本人の体型に合わせたラインの作り方、など。

またもう一つ大きな所は、服は人が着て初めて服という形なりますよね。決してハンガーが服を着ている訳ではないので。

でも、日本の洋服というのは、着物の文化から来ているので仕方がないのですが、ハンガーなどにかけた状態での服が美しいかどうか、という所に審美眼を置いてしまいがちです。

そうではなくて、我々の「ハウスカット」については、人が着て初めてスーツが美しく見える、美しく着心地を感じてもらえるかどうか、というところが全てだと思っています。

人が着ることで初めて美しく見えるものづくりを目指しています。

朝、服を選ぶ時に「何着て行こうかな?」と迷った時、着心地の良い服というのは、自然に手に取って選びますよね。今日これを着て行きたいな、着て行くとまた気分も上がる、それが大事なのではないかな、と思っています。

金子:そうですね、富山さんの話の続きになりますが、ジャケットの着心地というのは、劇的に分かる訳ではなくて、じわじわとなんか分かってくるもの、という感じなんですね。

例えば、大事な会議の時とか、気取った食事の時などに、上着を脱いで楽になろう、となるのではなく、上着が体を包んでくれている、というように感じる服が「いい服」なんではないかなと思っています。

商品開発の視点から言いますと、例えば、服を着て肩を回して「着心地いいですね」って言われる方が多くいらっしゃいますが、動きの大きい快適性ではなくて、もっと静かな動きの中でも快適性が感じられるのがいいスーツなのではないか、と考えて開発しました。

小森:ありがとうございます。じわじわ分かる着心地の良さ、また静かな快適性という表現がとても分かりやすいなと思いました。

小森:ハウスカットの細部のこだわりについても教えていただけますか?

金子:そうですね、後ろにサンプルが飾ってありますけれども、富山さんがお話ししましたようにボディにかかっていると綺麗に見えますけど、良さは着た時に出てくる、と思っています。

まず、腕を袖に通す動作のときから身体は反応を示すわけですよね。なので、まずは袖作りについてからお伝えしますね。

腕の太さに対して、アームホールの大きさをどのぐらいにするのか?一般的にアームホールは大きすぎると着にくい、かといって小さすぎても窮屈なので、絶妙な大きさを割り出しました。どちらかといえば小さめのアームホールに、ゆったりとした袖をつけるといった所にこだわりました。

また、内側の腕周りというのは、一番着用感に影響する所なのですが、柔らかく仕上げるためにこの部分は手で縫うということにこだわっています。

金子:次にパンツですね。もちろん主にはカッティングで綺麗に履きやすいという所を目指しているのですが、細かい部分を言いますと、ウエストの中側にタブがついていて内側をボタンでとめるのですが、このタブの部分が一般的なものより長くなっています。

実際に着用すると分かると思うのですが、このタブが長い方が、ウエスト周りの収まりや、着心地が良いんです。こういった細かい所にこだわりました。

また、ウエスト後中心にVスリットを入れて、着やすいパンツを考えて作っています。

金子:また、ハウスカットの重要なこだわりの一つに「毛芯」があります。

毛芯ってなかなか皆さん馴染みがないかと思うのですが、ジャケットの前身頃に入っていて、土台になっている重要なものなのです。

「今までの毛芯よりも柔らかくて、もっと体を丸く包むような毛芯を作りたい!」と、ハウスカットを開発するにあたって富山さんと試行錯誤しながら開発しました。

一般的な毛芯は何層にもなっていて肩周りをしっかり見せるものが多いのですが、肩周りを柔らかく着やすくしたいので、重なりをなるべく少なくしようとしました。そうした所、肩回りが今度は逆にボリュームが足りず、肩回りの見栄えが貧弱になってしまいました。

そこで、小樽工場の河村工場長にも相談、色々な切り替えダーツやラペルに工夫を施したり、「だき」と呼ばれる肩から脇の下にかかる部分に「補強布」を当てるなどの試行錯誤をして、「一枚で軽く、立体感がある毛芯」を完成させました。

この毛芯に富山さんが「ND 毛芯」(ND= ニューディメンショナル) と名付けました。

新しい立体と言うことで「ND 毛芯」をハウスカット専用に使っています。

小森:ありがとうございます!「ND 毛芯」という、今までにない新しい次元の毛芯を開発されたのですね。

(後編へ続く…)

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