MIYUKI CRAFTS SUITS の要となる生地を作っている御幸毛織四日市工場。
MIYUKI ならではのものづくりのこだわりを工場長の中川さんに、広報グループ小森さんがインタビューしました。
小森:本日は御幸毛織の四日市工場に来ています。工場長の中川さんに広報グループの小森から質問させていただきます。中川さんよろしくお願いいたします。
中川:よろしくお願いします。
小森:中川工場長が着ていらっしゃる制服、ロゴマークがアクセントになっていて、とても格好良いですね。後ろを向いていただけますか。
中川:はい、御幸毛織を背負って仕事をしています。
小森:今の制服になったのはいつ頃ですか?
中川:2023年の5月ですね。
この制服を一言で言うと「やばい制服」です。この制服は御幸毛織と取引がある5525Gallery(ゴーゴーニーゴーギャラリー)のTITO さんのディレクションで、Scye(サイ)の宮原さんにデザインをしていただきました。(※制服について詳しくはこちら)
この生地はドラゴンチノという1950年から使われている生地です。生地、デザイン、機能性、安全性を兼ね備えた本当にいい制服になっています。
小森: スタッフの皆さんからもすごく好評だと伺いました。
中川:そうですね。工場にも若いスタッフが増え、以前の制服では「コンビニに行くのも恥ずかしい」という意見があったんです。ファッションの会社ですので、制服を新しく、2025年の120周年に向けて新たな気持ちで ものづくりに励めています。
小森:ところで、四日市工場はすごく敷地が広いですよね。立地が四日市にあるということには何か理由があるのでしょうか。
中川:まずこの敷地は東京ドーム2.5個分あります。四日市ドームだと5~6個分の敷地面積になっています。
元々四日市には、天然繊維の工場がたくさんありました。四日市港にはコンビナートがあり夜景が綺麗なことでも有名です。天然繊維の受け入れで、四日市の町が発展してきたという歴史があります。さらに、四日市の西方にある鈴鹿山脈から豊富できれいな伏流水が流れてくるという地形になっています。
この工場では古くからその井戸水をくみ上げて染色・整理をやっているので、非常にベストな立地でものづくりをしているんです。
小森:ありがとうございます。
工場には伝統的な機械や最新の機械も導入していて、古くからの良いものと新しいテクノロジーのハイブリッド、まさに新旧の融合を感じました。
中川:そうですね。御幸毛織は明治38年から創業していて、当時のもの作りのやり方を変えてはいけない部分はそのまま残しています。一方で新しい設備や加工機も導入して、新たな開発にチャレンジしています。
現場の中には若い社員もベテランの社員もいますので、新しいチャレンジもしつつ、古いものも大事にしていくというハイブリッドな工場になっています。
小森:自然の恩恵を受けながらも、そういった新しいものと古いものを共存させたものづくりをしているんですね。また、SDGs にも力を入れているそうですが、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。
中川:現場の中には、ウールを綿(わた)の状態で加工する「トップ染め」という工程があって、そこで出てくる綿のくずがあります。
「これらを廃棄するのがもったいない」というところから※「WOOL NO HATAKE」プロジェクトを開始いたしました。
土壌の栄養素と言えば、窒素、リン酸、カリウム。この3つの栄養素の配合で土壌の栄養素は決まるのですが、その中でもウールは窒素分が豊富に含まれており有機肥料の中ではダイヤモンドと言われるぐらいです。
土壌に肥料としてウールを使うことによって堆肥化も早くて野菜の生育も良くなるんです。
この農業利用を四日市農芸高校さんと一緒に取り組んで試験を行ったことで野菜の生育に非常に差が出ることが分かりました。
一方、四日市はお茶の生産が盛んな地域です。お茶の生産者さん、我々地場の産業、学校が繋がってSDGs の取り組みを今進めているところです。
小森:廃棄される綿くずを肥料として活用し、農業利用しているんですね。
四日市工場のものづくりについて、もう少し詳しく教えていただけますか?
中川:我々は原料にこだわったものづくりをしています。そのこだわりの1つが「天然石鹸」です。使用している天然石鹸は、ミヨシ油脂さんの針状石鹸でして、人にヨシ、社会にヨシ、未来にヨシ、3つのヨシでミヨシの石鹸です。私は普段一般に市販されているミヨシさんの「白いせっけん」を愛用しています。こちらも現場で使用している物と原料成分は殆ど変わらないのですが、頭から全部これで洗えるくらいなんですよ。創業当初からお付き合いのあるミヨシ油脂さんは、自然由来の天然油脂にこだわりを持っていて、国内で真面目にものづくりされています。口に入れても大丈夫な成分で作られてますので、我々も洗いの加工でこちらを使っています。環境にももちろん優しいですし、生地にとっても「ウールの油脂分を程よく残す」という所が、実は最終製品にとってヌメリがあり光沢のある柔らかくふっくらとした風合いが出ますので、石鹸にはずっとこだわっています。
小森:ありがとうございます。
先日北海道にアサダの木を探しに行かれたそうですが、それもものづくりのこだわりに関係があるのでしょうか?
中川:アサダの木は現場の「洗絨(せんじゅう)」と呼ばれる工程内で使われています。洗絨機の中に洗濯板のようなものがあり、その部分でアサダの木使っています。現在こういうものはほとんどの設備では金属に変わっているんですけども、我々は木のものを採用しています。
先ほど言った天然石鹸はウールに対して風合いが良くなるメリットがありますが、取扱いが難しく加工時間が長くなると言うデメリットもあります。
加工時間が長くなるので、製品と接触する部分に金属を使用してしまうと製品へのダメージが出てしまいます。ですので製品にも環境にも優しい天然石鹸とアサダの木を使ってものづくりをしています。
アサダの木は希少性が高くなっており、我々も手に入れるのが結構大変なんですが、先日小樽の工場長から材木屋さんを紹介していただいて、直接北海道まで買い付けに行かせていただきました。
寒い北海道で採れる木です。年輪の中心がギュッと詰まったところを切り出して2年間くらい寝かせて、反ったり割れたりしないものを宮大工さんが彫って洗濯板を作るということをしています。
小森:ものづくりへの深いこだわりが伝わりました。ありがとうございます。
四日市工場の今後の目標や、取り組み予定などがございましたら教えてください。
中川:四日市工場の目標としては、安全第一ですので、さらに安全で安心して働ける職場をつくっていくというのがまず一つあります。
その中で若いスタッフもたくさん入って活気あふれる工場になってきたので、伝統の技法も守りながら新しいことにもチャレンジしていきたいですね。
新しい取り組みとして、先ほど申し上げたアグリの件もそうですし、また一方でSDGsの流れから化学染料といったものを使わないような生地加工の開発も進めています。
環境にも配慮しながら、新しいものづくりをどんどん広げて、最終的にはここで出来上がる製品が世界の『ナンバーワン』だと言われるようにしていきたいなと思っています。
小森 四日市工場の今後の発展がすごく楽しみですね。本日はありがとうございました。
中川 はい、ありがとうございました。
我々はこの四日市で天然繊維のものづくりを継続していきますので、こだわりの「愛せる服を。」より多くの方に知っていただければと思っております。よろしくお願いします。
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